健康食品の開発として、臨床試験を実施したいという相談を受ける機会は大変多くなりました。しかしながら、成分に関するブラックボックスが多く残っていたり、ヒト試験を実施する前に検討すべきことがある場合など、分析実験や細胞実験を優先した方がコストやスピードの観点からもメリットが多いことがしばしばあります。そもそも、実験をせずに過去の叡智を参考にする、文献調査で解決することもしばしばあります。臨床試験に関するFAQ(良くある質問)についても、掲載してみました。
文献調査を先にした方が良いケース
比較的良く知られている食品、香料、天然物などの有効性は、既に研究されていることが少なくありません。どのような研究を実施する場合でも50万円以上することがほとんどなので、それらの出費を回避することも含めて、まずは文献調査をお勧めします。文献調査をすることにより、今後の研究の参考となる情報や実施を回避できる項目を見つけることもできます。単純に一人の研究者(1つの研究機関)によるエビデンスよりも、複数の世界中の研究者からの情報の方が客観的に信頼できることは疑いようがないと思います。
こちらのページに価格も掲載していますので、以下の動画も含めまして、ご参照頂ければと思います。
成分分析を実施した方が良いケース
効果の高い製品であっても、ブラックボックスを残したまま販売することは、倫理的にも問題があるかもしれません。例えば、加工食品や発酵食品などは、素材となる食品が安全であっても、有害な成分が生じている懸念を拭えません。特に販売数の多い製品は、その素材について可能な限り成分を知っておくことをお勧めしたいと思いました。
こちらのページに価格も掲載していますので、以下の動画も含めまして、ご参照頂ければと思います
細胞実験をした方が良いケース
複数の選択肢(特に3項目以上)から1番を選びたい場合、臨床試験では非効率かつ高コストとなることが多く、細胞実験をお勧めすることが多いです。多くの候補から効果のあるものを探すことはスクリーニングと呼ばれていて、その価格もこちらで詳細に説明しています。
大学発ベンチャーには細胞実験やスクリーニングを得意とする企業も少なくありませんが、成分分析と臨床試験まで実施できる組織は私共が唯一ですので、製品開発や販売促進を検討されている場合、是非とも私共を頼って頂ければと思います。
臨床試験のFAQ集
臨床試験を依頼する際に質問されることを随時追加していきたいと思います。なにより価格についてのお問い合わせが多いので、こちらのページや以下の動画をご参照下さい。
価格が安すぎるのですが何故でしょう?
簡単に言えば、利益を得ていないからです。株式会社ユーザーライフサイエンスで受託していることが多いですが、順次、非営利法人である、一般社団法人 天然物機能性研究機構に移行しつつあります。利益を得ていないどころか、経営者や重役に相当する教授陣の報酬もアリません。純粋に研究として実施しています。さらに、外部委託が少なく、被験者募集、血液検査、統計解析など、ほぼ全てを組織内で実施していることが多いです。
利益を得ていないことで半額、経営者や重役の報酬がないことでさらに半額というイメージで、一般的な受託業者に比べて、1/4や桁違い(1/10程度)に安価である場合が多いです。
栄養素に効果があると考えて良いでしょうか?
原則として、栄養素に効果はありません。ビタミン、ミネラル、アミノ酸、脂肪酸、有機酸などを食品センター等に分析を依頼して、自信を持ってそのように質問をされると、否定することに心苦しくなることがあります。統計的には一般的な日本人は栄養素に充足しており、不足する栄養素であっても充足率は80%以上にも達します。個別の栄養素が不足されている方もおられますが、臨床試験は10名以上の方々の値から統計解析をするので、栄養素の不足を補うことで臨床的な効果が得られる可能性はほぼゼロです。
単純に言葉を間違っている場合もあります。例えば、ポリフェノールを栄養と勘違いしている場合などです。ポリフェノールは栄養素ではありませんが、臨床的な効果の期待される機能性食品成分であることが多いです。普段の食生活では摂取できない(≒栄養素ではない)物質の方が影響しやすいことは当然とご理解頂けるかと思います。特に生鮮食品や発酵食品に効果がある場合には、栄養素以外の特別な成分が含まれていることも多く、まずは分析をお勧めしたいと思います。
摂取期間が長いほど良い結果が出ますよね?
素人的な直感としては理解できるのですが、実際は真逆です。試用期間は、効果が出る最短にするほうが、良い結果が出ます。理由としては、身体が適応したり、飲み忘れをする確率が増えるからです。一般的には4週間、認知機能や体脂肪率など、身体の構造変化が必要と思われる試験は6週間をお勧めしています(メタボリックシンドローム関連の機能性表示食品取得を目指す場合は残念ながら12週間摂取が必要です)。
これは、筋トレを喩えにするとご理解頂けるとことが多いです。全くトレーニングをしていない人にとって、腕立て伏せ10回は大変です。当初1週間は筋肉痛に苦しみ、2週間で慣れ、4週間後には筋力が十分アップしていることと思います。これを8週間、12週間続けても運動強度としては軽すぎて、トレーニングをしない日も増えてきて、徐々に効果が薄れていく、といった具合です。
ベースラインを合わせるべきですよね?
試験をしたいサンプル(製品等)とプラセボを摂取する方々の測定前の値(ベースライン)をピッタリと合わせたいと言われることが増えてきました。心情としては、ベースラインが2つの群で一致している方がスッキリすることは理解できます。
これが難しい理由は「無作為化二重盲検試験」の呪縛かと考えています。”randomize”という言葉は、今では素直にランダム化と言われることも多いですが、教科書的には「無作為化」が主流かと思います。そのためか、作為の入ったランダム化は良くない、捏造に近いという風潮がありました。また、すべての値でベースラインがピッタリ揃っている論文は、それだけで捏造的に感じられる場合もあります。こういった慣例に従い、無作為なランダム化を採用することが多いです。
「無作為」に「ランダム化」を達成することは、ランダム化処理を何度も(作為なく)繰り返すことで達成できます。また、事前測定の直後にサンプルをお渡しできないので、数十名分の郵送費と梱包や発送の手配が必要になります。少し考えただけでも苦労することがお察し頂けるかと思い、コストが上がってしまいますので、まずは一般的な「無作為化」をお勧めしています。機能性表示の届け出のために必要などの際には、ケース・バイ・ケースで対応可能です。
安全性の評価も実施すべきですよね?
上記とも同様ですが、 営利目的のために必要のない項目が上乗せされていることが少なくないです。その中で最も頻度が多いのが安全性に関する項目です。評価項目が多い(血液検査が10項目程度、尿検査が5項目程度)こともあり、報告書に見栄えを良くするためにも利用されている雰囲気があります。最悪だと感じるのが、安全性の評価項目の中から棄却条件(参加者を除外するための条件)を探し、無理矢理に良い結果を導くということも見受けられます。効果のない製品を偽ることは、リピートされないことで広告費が嵩み会社や業界全体の信頼も失墜させます。必要のない評価項目を無理に「トッピング」させず、シンプルな評価項目や研究計画とコスト削減をお勧めしたいと思います。
機能性表示食品の届け出には安全性の評価が必要ですが、これは既に販売実績がある場合はクリアできることが多いです。もしくは、他社や類似製品などで説明できる場合も少なくありません。安全性に関する文献調査と機能性表示食品の様式作成(様式IIの該当部分)は最大30万円です。安全性試験よりも格段に安価になりますので、まずは安全性に関する文献調査をお勧めしたいと思います。
複数の(多くの)評価方法を実施すると良い結果が出ますよね?
この質問自体は誤りではないのですが、同じコストをかけるのであれば複数の試験を実施することをお勧めします。例えば、脳に効果がある食品について、メンタルヘルスや眠りを改善することもありますし、認知機能を改善することも期待されます。主にストレスを抱えている世代は30~50歳くらいの年齢層であり、もちろん認知機能は障害されていません。認知機能試験に参加されるご高齢の方はメンタルヘルスの良い方々が多く、双方で良い結果が出すことは極めて困難です。
非常に効果の高い食品であっても、100%再現性良く統計学的に有意差が出る訳ではありません。仮に、80%の確率で再現性良く効果を検出できる食品であっても、それを3回すべて良い効果になる確率は50%程度になってしまいます。つまり、例えば同じメタボリックシンドローム関連の指標でも、血糖値、HbA1c、血中脂質、コレステロールの全てが良い方向で有意差を出せる可能性はゼロに近付きます。逆に、複数の指標を評価して、どれか1つでも良い結果を出したい!という方向性でしたら、その成功確率を100%に近付けることも可能です。
例数(被験者さん)の人数が多いほど良い研究ですよね?
前述のような営利目的の臨床試験受託会社は、その売上をアップさせるために例数(被験者さんの人数)を闇雲に多くすることを提案されるようです。売上がアップするだけでなく、良い結果も(多少)出やすくなるので、一見、依頼主にとっても都合が良い内容になります。
しかしながら、人数を増やして無理矢理良い結果を出しても、結局は効果が不十分であるので、リピートが少なく広告費が嵩むなど、依頼主にとって不都合な未来が待っていることになります。加えて、業界全体の信頼を貶めてしまいます。
本研究グループのように、すべてのプロセスを自前で丁寧に研究をしていくと、10名未満でも良い結果が出ることも少なくありません。統計学的に考えてみても、例数12名以上であれば100名以上と比較しても検出力に大きな差はありません(こちらのページに記載されいるt分布を見れば一目瞭然です)。人数や測定項目を闇雲に増やして見積金額を上げるような、商売目的の企業に依頼しないことをお勧めしたいと思います。
被験者スクリーニングすると良い結果になりますよね?
個人的には(正確な統計解析をした訳ではありませんが)真逆、もしくは無意味であると考えています。例えば、30名に絞るために45名を募集して15名を削ると、良い結果になるようなイメージを持つように思います。実際は「薄まる」という感覚です。
一般的に、募集人数に達すると締め切ります。つまり、ちゃんと連絡を確認して、早目に主体的に連絡を頂ける方が採用されます。自然と、真面目で誠実な方々の確率が高まります。人数が多くなると、相対的にメールやLINEの確認が遅く、連絡も遅い方々が含まれます。さらに主体性なく、頼まれたからやってみる、という方も増えてきます。何より、早目に連絡を下さった方々にお断りすることは心が痛み、登録解除されてしまうリスクも高まります。
こういった事情より、スクリーニングをするのではなく、不適合者(検査値が基準以下など)を解析の際に除外するという方向性をお勧めしたいと思います。
UMIN登録をすべきでしょうか?費用は必要でしょうか?
UMIN登録についての詳細はこちらのページをご確認下さい。機能性表示食品を目指した臨床試験の場合必要になります。その場合、臨床試験の費用に含まれています。作業自体は事務手続きなのでほとんど費用は発生しませんが、研究計画全体を合わせる必要があり、簡易試験や予備試験などではUMIN登録を実施していません。
機能性表示に直接関係のない評価項目で臨床試験を実施する場合はUMIN登録は不要ということにもなります。例えば、認知機能検査はUMIN登録をした試験内で実施をして、直接的に機能性表示で訴求することのできない血液検査や尿検査は別試験で実施するといった具合です。2つの試験を実施するとコスト増になる印象がありますが、安価になるケースもあり、成功確率は確実に高くなります。